02実例(参考に)

専修大学

今年度の式典におきましては、大学教育の幅の広さを示すことのできる4種類の学位を授与することができました。学部では4431名が卒業し学士号を取得しました。大学院では、123名が修士号を取得し、18名が課程博士号を取得しました。さらに、専門職大学院である法科大学院では、第1期生である54名が法務博士号を取得しました。学部において晴れて卒業を迎えられた皆さん、並びに大学院において研鑽され修士、博士となられた皆さん、専修大学を代表し、心からお祝い申し上げます。また、式典に参列されているご家族の方々に対しても、お慶び申し上げます。これまで、本学の教育方針ならびに運営について、ご理解と多方面にわたるご支援をいただきましたことに、厚くお礼申し上げます。
  昨年度から学部の卒業式と大学院の学位記授与式を取りまとめて、ここ日本武道館において合一の式典を挙行しておりますが、総計4626名の学位取得者が相集い、本学の教育の幅の広さと力強さを体感しつつ、これから専修人としての自覚を持ち、それぞれの目標に向けて一斉に学窓を飛び立って行く光景は、本学の大学力、総合力のさらなる向上を強く予感させるものであります。
  学部あるいは大学院において皆さんは、これまで何を学び、何を体得したでしょうか。人様々でしょうが、話すべき内容を持っている諸君は、胸を張って学窓を飛び立ち自己実現に邁進して行くことになるでしょう。大学教育によってすでに自己の殻を破り、自己の進むべき道を見定めていることは、教育した私達にとっても達成感を覚えます。しかし、今話すべき確たるものがないという諸君も、そう悲観することはありません。自己探求に要する時間には個人差があるのです。前向きな姿勢があれば、間もなく自己の進むべき道が目の前に広がってきます。先ほどの問いかけは、実は、大学教育の本質に拘わる大きなテーマでもあります。諸君は、これまでの大学教育によって自然と「ものの考え方」が身についているはずですし、これからの人生の節目、節目に大学教育で与えられた羅針盤が威力を発揮していくことになります。大学で教授されたことは、社会に出てすぐ役立つスキルというよりも、必要なスキルを作り出すための考える力を育成することに力点がありますので、教授されたことが花開くには少し時間の流れが必要です。
  皆さんに対する先ほどの問いは、大学で教育する側には、「大学では何を教授し何を体得させようとしているのか」という問いに転化されます。本学には、確たる大学論があるのかということを問いただすことになります。大学も社会の変動に大きな影響を受けます。大学で何を教授し、大学が社会的にどのような役割を担うかは、社会の変動とともに推移します。しかしながら、私学の場合、いかなる状況にあっても建学の精神を忘れてはなりません。
 本学が創立されてから今日に至る126年の間には、関東大震災や戦禍にさらされ大学の存立自体が危うくなった局面に遭遇しましたし、専門学校令から大学令への移行、さらには新制大学への切替えなど、大学制度の変革の嵐の中にあっても、学窓に灯火を点し続けてきました。専修大学の126年の歴史と伝統には、創立者たちの高等教育に対する熱き思いに共感し、その建学の精神を受け継ぎながら大学の発展に鋭意尽力した人々の生きざまが凝縮されています。
  本学の創立者である相馬永胤、田尻稲次郎、目賀田種太郎、駒井重格の4先生は、明治維新前後の動乱の中で生き抜き、国費や藩費を得てアメリカに渡りました。コロンビア、エール、ハーバード、ラトガースの各大学で勉学し、約8年間の留学生活を終えて、明治13年に本学の前身である専修学校を創立しました。創立者たちは、異国の地において、自分たちが受けた恩義や学恩に報いるために何をなすべきかを考えました。その結論が、新時代を担う人材を高等教育によって育成するということでした。創立者たちは、留学によって得た最新の知見を社会に還元し、近代法の黎明期にあった祖国日本の発展に寄与しようとしたのです。本学の建学の精神は、専門教育によってわが国の人的基盤を整備し、市民社会の屋台骨を支える人材を市民レベルにおいて養成していくということに集約されましょう。
 このような創立の背景を顧みますと、本学は、社会との相互作用の中で大学の役割を捉えており、実学的指向を持っていると言えますが、それにとどまらず、市民社会のあるべき姿を本学の知の発信として提示していくという高い志を持っています。このことは、21世紀において専修大学が何をなすべきかを考える際の指針になりました。本学は、現在、21世紀のビジョンとして「社会知性の開発」を掲げていますが、このビジョンは、創立者たちの建学の精神を21世紀に生かすためのものです。
 社会知性は、社会の諸課題を解決するための知的能力を言いますが、社会がどのような問題解決を求めているのかということに胸襟を開くとともに、社会のあるべき方向性を主体的に発信していくということが求められます。しかも、社会知性をもとに社会の開発を担う人材には、人間性と倫理観が備わっていなければなりません。人の痛みを理解し、喜びを共に分かちあえる人間でなければ、よりよき社会の発展は描けないのです。専修大学の学窓を飛び立つ諸君は、このような社会知性の開発の担い手であることを深く肝に銘じて下さい。しかも、専修大学の21世紀の歴史を刻んでいくのは、建学の精神を社会において発信していく諸君自身なのです。
  昨今の大地震や異常気象による災害などを目の当たりにしますと、自然の循環を度外視した人間本意の考え方を見直す必要があると思います。また、鉄道の脱線によって多数の死傷者を出した事件、小学生を標的とした殺人事件、耐震強度偽装事件などの出来事は、社会の安全基盤が崩壊しつつあることを感じさせます。価値体系が崩れ、規範意識が希薄になってきている今日の複雑化した社会において、市民社会の屋台骨を支える有為な人材を育成しようとした創立者たちの思いは極めて重要であり、本学の目指す社会知性の開発は、混迷した社会に光を与えるものと確信しています。
  本年4月からは、法学部では新設された政治学科がスタートし、商学部では名称変更されたマーケティング学科がスタートします。さらに、専門職大学院としては、会計専門職大学院の設置の検討がなされています。この数年間の社会知性に基づく知の発信によって、専修大学はさらに飛躍することになるでしょう。学窓を飛び立つ諸君、専修大学で学んだことに自信と誇りを持ち、社会知性の開発の実現に向け、それぞれの分野においてパワフルにかつハートフルに活躍されますことを期待し、第15代学長のスピーチ挨拶といたします。
参考までに・・・
専修大学HP
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