02実例(参考に)

龍谷大学

本日ここに卒業式を迎えられた皆さん、おめでとうございます。ご列席の来賓の方々、先生方や職員の方々と共に、心よりお祝い申し上げます。またこれまで皆さんの勉学を支えてこられましたご両親、ご家族の皆様にも心よりお祝いを申し上げます。
このたび学部を卒業される皆さんが本学へ入学されたのは2003年4月でしたが、その入学式において、私は、近世のはじめに現われた思想家フランシス・ベーコンの言葉を引いて、「知は力である」ということを申しました。知識が大きな力を持っていることは、「国民に知識があれば、もっと多くのことができるはずだし、もっと多くの物を手に入れられるはずなのに、知識がないから、それができない」という、ある発展途上国の大統領の嘆きのうちにも、それは語られています。ですから国民に知識をつける教育は発展途上国において最重要課題なのです。日本が敗戦の焦土から奇跡の復興を遂げることができたのも、日本人のほとんどの者が学校教育を受けており、教養と知識を身に付けていたからだと言われております。すばやい復興を可能にしたのは日本の教育でありました。
21世紀は、20世紀が知識の時代であったのに対して、情の時代、心の時代になると、しばしば言われてきましたが、近頃では21世紀は「知識基盤社会」であるということが、頻繁に言われております。知識基盤社会というのは、新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域での活動の基盤として重要になる社会であります。このような社会がはたして良い社会かどうかは問題ですが、私たちは否応なく、そのような環境のなかに置かれております。皆さんは、この知識基盤社会に生きていくものとして、大学において新しい知識・情報・技術を身につける努力をしてきたと思います。知識基盤社会のような、知識なくしては生きてゆけない知識重視社会においては、高等教育機関としての大学は重要な役割を担うことになります。極端な言い方をすれば、大学で学んでおかなければ、知識基盤社会に適応していけないのです。大学で学んだ皆さんは、知識基盤社会に適応し得る者として大学を巣立っていきますが、知識は日進月歩であり、技術革新が絶え間なく生れます。皆さんが大学で学んだことも、やがて古いものとして通用しなくなるでしょう。したがって本学は、みなさんに旧来の知識を継承する能力だけではなくて、それを乗り越え、パラダイムの転換を図るような革新的な創造力を養うとともに、その急速な変化について行ける様な幅広い知識と柔軟な思考力を身につけてもらうよう努めてきました。したがって皆さんもそのような幅広い知識と柔軟な思考力を身につける努力をしたことと思います。
明治以来の日本の教育は、今日の日本の繁栄・発展を導くうえで、大きな成功を収めてきました。しかし今日報道される教育現場の荒廃や、凄惨な事件、親子間の虐待などは、かつてなかったことであり、それが高等教育の普及を前提にしている知識基盤社会で起こっていることに私は注意したいと思います。教育先進国であるはずの日本でも、発展途上国と同じく、教育が最重要課題になっているのです。
知識基盤社会において必要とされる知識は、本当に人間として身につけておかなければならないような知識なのか。すなわち豊かな人間性を養ってくれるような知識なのか。それは、いろんな情報機器を操るための、あるいは様々な社会の制度や仕組みを理解し利用するための、技術的な知識にすぎないのではないか。たしかに生活していくためには、必要な知識ではあるけれども、それを持っていることが、即ち立派な人間であるということではないように思われます。そのような知識を持っていなくても、人格的に立派な人は沢山いるのに、そのような人が生きて行き難い、そういう社会がはたして良い社会なのか。しかし否応なく私たちはそのような社会のなかにいなければならないのです。何故でしょうか。
皆さんが知識基盤社会のなかで、ふと「何のための知識なのだろうか」「何のための技術革新なのだろうか」と疑問に思われることがありましたら、そのときには、何が本当に頼れるものなのか、一体何が、自分が究極の拠り所となしうるものなのかを考えてみて下さい。そのとき知識基盤社会の有する過度の知識重視の傾向が弱まり、21世紀は心の時代、情の時代だと主張するもう一つの傾向とバランスのとれたものになるだろうと思います。このバランスが大切で、それが崩れるところから、いろんな問題が生じてきているように思います。
皆さんには、建学の精神のもと、究極の拠り所を求め、その究極の拠り所に立脚して生きることの大切さを学んだ皆さんには、知識という力を持った、責任ある者として人類の歴史に力強く関わって欲しいと思います。
このようにお願いして、皆さんの門出に対するお祝いの言葉といたします。 本日はおめでとうございます。
こちらは龍谷大学の学長、神子上 恵群学長が読み上げた卒業式のスピーチ挨拶です。
「知は力である」
ごもっとも。
参考までに・・・
龍谷大学HP
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